むかわ町 観光案内 スペシャルコンテンツ
奥さんと中学生の娘は大の仲良しで、二人でどこかへ出かけるのが週末パターンだ。そんなとき、僕はぶらり一人で旅に出る。むかわ町には、どんな出会いと発見があるのだろうか?
10月末にむかわへ行こうと決めていた。目的は生ししゃもを食べるため。しかし、今年は休漁だと知り大ショックだったが、10月26日に「秋の味覚まつり」が開催されるらしい。
たまには親子でと奥さんと娘を誘ってみたが、「娘が受験でそれどころじゃないよ」と、二人にパスされた。やれやれ。なら、いつものように一人旅しようと、前日に仕事を早く切り上げて、またまたむかわにやって来た。
まず訪れたのは「BROWN and ordinary」というお店。
札幌にあるセレクトショップ「and ordinary」の姉妹店で、2019年むかわ町の中心部にオープンした。
「妻がむかわ出身で、僕は環境的にこの町が好きだったので、息子が小学生になるタイミングで移住しました」とオーナーの鎌塚元夢さんは教えてくれた。
店に入ると、洋服や生活雑貨が並び、アコースティックなBGMが心地いい。札幌では洋服を中心とした品揃えをしているが、むかわでは食品が4割ほど占めるという。
調味料など食関連のセレクトは、一般的なスーパーにはない品のいい暮らしのテイストを感じる。「お客さまの日常に寄り添うというコンセプトは札幌店と変わりませんが、こちらの方がより日常に密着しているセレクトになっています」
鎌塚さんは毎月東京や大阪などの展示会に出かけ、
直接商品を買い付けているという。「代理店を使わず、商品のクオリティを吟味して、他店にはないアイテムを意識してセレクトしています」
洋服の縫製やデザイン、雑貨のテイストを手にとって見ると、一点一点にクオリティの高さを感じる。
思わず妻にお土産を買いたくなり、「丸メンパ」という木製の曲げものの弁当箱を購入した。これで食べるお弁当、おいしいだろうなあ。
本日の宿は「むかわ温泉四季の館」の「ホテル四季の風」。ここには天然温泉施設や道の駅、プールやトレーニング施設が併設されている。
早めにチェックインして、夕食前に温泉を楽しもう。
ここには展望風呂があるらしい。
浴衣に着替えて、いざ展望風呂へ。
浴場に入ると、夕日で赤く染まっていた。
ここはかけ流しの温泉で、泉質は強食塩泉。
湯の花で浴槽の底が見えないほどお湯は濃厚。じんわりと温泉成分が染みわたる心地よさを堪能した。
部屋に戻って撮った、むかわの町の夜景。きれいな夕暮れ、いい夜になりそうだ。
夕食に出かける前に、ホテルの1階にある物産館を物色。新商品の「むかわの佃煮」が気になった。ししゃもでダシをとった味わいって、うまいんだろうなあ。
そして、むかわ産ななつぼし使用の発芽玄米。パッケージには、やはり恐竜キャラが描かれている。
街に出て少し歩くと、ひときわ明るい店の灯りにひかれた。定食、とんかつ、カレー、寿司、ステーキ…なんでもありだ。
「灯泉房」ののれんにグッと引き寄せられた。うまい予感がする。この店に決めよう。
カウンターに座ると、目の前のショーケースに魚介のネタがズラリ。一見して鮮度の良さがわかる。さて、どの美味を味わうか。
まずはビールで乾杯。風呂上がりの乾いたノドに染みる…あーうまい!
お店のネタの紹介カードを見ると、地元産や道内産の魚介を供しているらしい。しかも厚切りで!そこがこだわりなのだろうか。
肴は、ホッキとホタテ、マツカワカレイの身とエンガワ、ブリの刺盛りをチョイス。
地元産のホッキは、食感がやわらかく、噛むほどに甘みと旨みが口中に広がる。マツカワカレイのコリッとした食感も絶妙だった。
次に選んだ日本酒の銘柄は「雪さやか」。地元の小坂農園さんが生産した米を使い、秋田の酒造メーカーが醸造した酒だという。
口にすると、フルーティーな香りと甘みが広がる。すっきりとした旨さが味わえる純米酒だ。
刺身などの和食は店主、洋食は息子さん、中華は奥さんが担当だという。なるほど、ご家族が力を合わせて多彩な味わいを創り上げているのだ。
締めに、しょうが焼き定食を注文した。やわらかい豚肉に甘辛味のタレが絡み、めちゃうまだった。
店の壁面に並んでいる野球のサインボールについて聞くと、店主の友だちがプロ野球球団の寮長をしていたことがあって、その関係でファイターズなどの選手から融通してもらったとか。
店主の木村英雄さんは前職の転勤でむかわ町に移住し、そのまま住み着いて30年前に店を始めたという。「地元の友だちが大事だから、この町を離れられなかったんだよね」木村さんの温かい人柄が伝わるお店でした。うまかった〜!
次の朝、5時半に起床。おはよう、むかわ!カーテンを開けると、空が白みはじめていた。
川に昇る朝日を見ようと、朝散歩に出かけた。むかわ町に流れる鵡川。朝焼けとのコントラストが美しい。
まだ人気のない街に朝日が差し込む。澄んだ空気が気持ちいい。
珍味屋さんの店頭で、回転式の乾燥機で魚を干していた。鮭とばをつくっているんだろう。札幌では見ることのない光景だ。
秋の味覚まつりの会場となる「ぽぽんた市場」に行ってみたら、まだ人影も祭りの準備もなかった。数時間後、ここは賑わうんだろうな。
ホテルへ戻って、朝食前に朝風呂へ。前日に入った展望風呂とは別に、1Fに日帰り入浴もできる「むかわ温泉 四季の湯」がある。
内風呂は展望風呂と同様、黄土色っぽい濃厚な湯。
露天風呂はワイン色のお湯だった。
見上げると、爽やかな青空が見える。腹が減った。朝ごはんを食べに行こう!
チェックイン時に選んだのは「和定食ししゃも」。地元産の食材にこだわった正統派ラインナップである。
ごはんは、むかわ産のななつぼしの新米。みずみずしい味わいが食欲をそそる。
休漁で生ししゃもは食べられないが、やはり本場のししゃもはうまい!
おっ!道の駅の物産館で売っていたししゃも醤油を発見!
ししゃもにちょっとだけ醤油をつける、これがまた美味!
ごはんが何杯も進んでしまい、大満足の朝膳だった。
ごはんが何杯も進んでしまい、大満足の朝膳だった。
祭り会場へ行ってみると、のぼりがズラリ。「秋の味覚まつり」は今年第2回の開催で「ししゃも休漁でも負けない絶やさない伝統の技術・むかわの味」というキャッチフレーズにメッセージが込められている。
会場では鵡川高校吹奏楽部や軽音楽部の生徒の演奏が行われ、ステージから会場の雰囲気を盛り上げていた。
むかわ和牛やむかわ加工のししゃもなどの無料配布が行われ、長蛇の列ができていた。
さまざまな味を提供するブースが並び、むかわ町や近隣市町村のうまいものが選び放題!
そんな中から「ししゃも汁」を選んで食べてみた。2尾のししゃもと野菜がたっぷり入った、塩味のやさしい味わいだった。
前日「灯泉房」で飲んだ日本酒「雪さやか」を売っている小坂農園の小坂さんを発見!なんだかうれしくなる。
※小坂さんは「むかわで旅めし・冬篇」に登場した小坂農園の代表・小坂幸司さんです。
小坂さんのブースで「むかわジンジャーエール」を購入。生姜が効いたスパイシーな味わいが爽やかだった。
祭り会場から「ぽぽんた市場」の店内に入り、今回の食材の買い出しへ。「新物」「本ししゃも」の文字に誘われる。
むかわも鮭の産地なんだ。やっぱり秋が旬だよなあ。
野わさび=山わさび。ワイルドな辛さがたまらない。
別名「ハナイグチ」という落葉きのこは、いいダシが出る山の茸。
むかわの山では栗も採れるのか。
これが今回の戦利品。むかわ産の秋の旬がぎっしり!
その中で気になったのが穂別地区にある「北上椎茸園」。ネットで調べると、そこで原木栽培の椎茸を購入できるという。昼食を食べてから、行ってみることにした。
蕎麦好きの知人から「むかわにおいしい蕎麦屋がある」と聞き、ネットで調べて「蕎麦家いごころ」に行ってみた。
メニューを見ると、明らかにごぼう天を推している。一番人気と思われる「ごぼう天ざるそば」を注文した。
メニューとは別に「いごころのこだわり」と題した冊子が置かれ、食材や味付け、調理などのこだわりが手書きの文字で細かく記されている。蕎麦づくりに対してしっかりとした考えがあるお店なんだろう。
これが供されたごぼう天ざるそば。
蕎麦は太めの平打ち麺。新蕎麦の風味が香る。うまい!
近隣で採れたごぼうを薄くスライスして上げたごぼう天。うまい!
店主の苫米地英則さんは、もともとWEB系の仕事をしていたが、独学で蕎麦づくりを学び、2016年にこの店を開業した。研究を重ね、素材を大切にした味を追求しているという。本当においしい味わいでした。ごちそうさまでした!
さて、ぽぽんた市場で見つけた「北見椎茸園」に行ってみよう。穂別方面に車を走らせると馬の牧場が見えた。
牛たちもいるよ。道中はほっこりした気分になる。
ナビに従って走っていくと山間の細道になっていった。
特に看板もなく迷っていると、3代目オーナーの北上広人さんが現れた。「少しお話を聞かせていただけますか?」と聞くと、快く応じてくれた。
「ハウスを見てみますか?」と案内され、椎茸づくりの現場へ。ちょっとドキドキする。
ここは北海道では稀有な椎茸の原木栽培を行っている。「原木にドリルで穴を開けて、一つひとつ種菌を植え、半年間管理して熟成させたほだ木を水浸けし、木を組み上げていきます」
「木を寝かせている間も、水をかけたり、ハウスを開け閉めしたりして、温度管理を徹底します。乾かしたらダメになるので、湿度の管理も大切ですね」実に手間と時間のかかる工程で椎茸は栽培されているのだ。
これは椎茸の原木。一般的には広葉樹のナラやクヌギの木が適しているという。むかわのほか、厚真や早来、千歳辺りで切り出した木が多く使われる。
収穫した椎茸は、肉厚で軸が太く立派な形をしている。
「原木栽培の椎茸は、味が濃厚で香りがしっかり出ます。椎茸好きな方は原木を選び、札幌などから買いに来る方もいますね」
乾燥した干し椎茸。通常の干し椎茸と比べ、身が締まり、味風味が濃厚で歯ざわりが良いという。
敷地には創業40周年、50周年の碑が立てられている。
北海道で始めて椎茸の人工栽培に挑戦し、昭和39年「第6回北海道農業賞」を受賞した創業者の技術と思いは今も引き継がれている。
時計は15時半を過ぎ、日が落ち始めている。そろそろ帰ろうか。札幌方面に車を走らせた。
穂別ダムの近くで車を停め、紅葉と夕日の撮影タイム。
10月後半、紅葉はピークを過ぎているようだ。
鮮やかな紅葉とは言い難いが、晩秋の枯淡な趣がある。
今回もいろんな味と人に会いました。むかわ、また会おう!
今年は休漁でむかわ産は味わえないが、道東産の生ししゃもが手に入った。脂がのった上品な味わいは、実に貴重だ。
ししゃもでもう一品、ほっこり栗ごはんと落葉きのこの味噌汁を添えて。これぞ秋深い味わい、しみじみするおいしさだ。
北上さんの生椎茸は、腹を上にして炙ると汁が出てきたら食べ頃。汁がこぼれないようにかぶりつくと、超絶うまい!
秋鮭のアラは、味噌味の石狩鍋風に。椎茸ほかたっぷりの野菜と煮込んで、ダシのきいた味わいを満喫。
野わさびをたっぷりおろして、蕎麦にまぶしてツルッと。辛い!うまい!なかなかの滋味でした。
〆はかぼちゃのぜんざい。やさしい甘さがホッとする。
今回もおいしくできました、秋のむかわめし。ごちそうさまでした!